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生理不順

生理は健康を判断する
一つの指標

女性は生理の変化が疾患の兆候となる場合があります。
また、生理の異常を放っておくと、将来、疾患を発症しやすくなったり、不妊になったりする恐れがあります。
基礎体温を測って生理周期を把握すれば、身体の状態を正しく確認でき、体調変化の早期発見やスケジュール管理をしやすくなります。

生理不順について

生理不順(月経不順)とは、生理初日から次の生理初日までの生理周期が乱れた状態です。
生理周期は20歳くらいまでに概ね安定しますが、毎回同じ周期になるわけではないため、生理周期が約25日~38日で来る場合は大きな心配はいりません。
しかし、生理周期が遅くなったり早くなったりして困っている場合、3ヶ月以上生理が来ない場合は、当院を受診してください。

正常な生理の目安

生理周期日数 約28日間(25~38日)
生理周期の変動 6日以内
卵胞期日数 17.9±6.2日
黄体期日数 12.7±1.6日
出血持続日数 3~7日(平均4.6日)
経血量 20~140ml


上記の範囲に収まらない場合は、生理不順と考えられます。
なお、初潮は10~14歳、閉経は45~55歳とされているため、女性の生理は約30〜40年続くと考えられます。

生理周期とホルモン分泌

女性ホルモンの黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)は、卵巣から分泌されます。

まず、脳の視床下部がホルモンを分泌し、その刺激によって脳下垂体が卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌します。
さらに、FSHの刺激を受け、卵巣から黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌される仕組みとなります。
卵巣や脳から分泌されるホルモンは特定のリズムで分泌されることで、生理周期ができあがります。
このようなホルモン分泌のバランスが乱れると、生理不順に繋がります。

生理不順の原因

原因は複数考えられ、例えば、睡眠不足や疲労、激しい運動、ストレス、ダイエットなどが挙げられます。
一過性の乱れではなく、生理不順が長引く場合は、卵巣機能などに疾患が隠れている恐れがあります。
生理不順は比較的よくあるものですが、放っておくと将来的に不妊になる恐れがあるため、なるべく早めにご相談ください。

各段階での原因

10歳代  性機能が成熟していないため、排卵しないことがあります。
妊娠期  妊娠すると生理は来ません。また、授乳期も生理が来ないことがほとんどです。
更年期  女性ホルモンの分泌が少なくなり、無月経・生理不順が起こりやすいです。
閉経後 50~55歳くらいになると、多くの女性は更年期を迎え、閉経します。

想定される原因

多のう胞性卵巣症候群

月経不順の方にしばしば見られる疾患です。
排卵が難しい体質のため、放っておくと不妊症や子宮体がんになる危険性が高まります。

高プロラクチン血症

プロラクチンは授乳に必要なホルモンであり、出産すると分泌されるようになります。
排卵を抑制する作用があるため、無月経や生理不順が起こります。
高プロラクチン血症は、出産していないのにプロラクチンが過剰に分泌される疾患で、乳汁分泌を伴う無月経の場合、強く疑います。
また、一部の精神疾患の内服薬や下垂体腫瘍が原因となることもあります。

甲状腺機能障害

甲状腺から分泌されるホルモンの問題で、生理不順に陥ります。甲状腺機能障害では、生理不順の他にも重い症状が起こりやすいため、無月経以外にも症状がある方がなるべく早めに治療を受けることが重要です。

激しい運動・ダイエット、肥満、
ストレス

若い女性では、激しい運動やダイエット、ストレスが原因となる無月経や生理不順が起こりやすいとされています。
無排卵となり、重症化すると女性ホルモンも分泌されなくなります。
専門医の診察を受け、指示に従って、適正体重の維持、質の高い睡眠、適切な運動と食事、規則正しい生活リズムなどといった生活習慣の見直しを行うことで排卵は元に戻ります。

受診するべき生理不順

受診するべき生理不順生理が3ヶ月以上来ない状態を「続発性無月経」と呼びます。無月経は深刻な疾患の症状として起こることがあり、将来的に不妊になる恐れもあるため、注意が必要です。卵巣の機能低下によって排卵が難しくなっている状態であり、プロゲステロンやエストロゲンなどのホルモン異常が生じている恐れもあります。

無月経の他にも、生理周期39日以上の希発月経、24日以下の頻発月経、生理の日数が短い過短月経、日数が長い過長月経、排卵せずに生理が来る無排卵月経についても、なるべく早めに受診し、検査を受ける必要があります。

生理不順を治療せずに放っておくと、排卵が難しくなる多のう胞性卵巣や、出産していないのにプロラクチン(母乳を生成するホルモン)が過剰に分泌される高プロラクチン血症を見逃す恐れがあります。

睡眠不足や疲労の解消、栄養バランスが整った食事、規則正しい生活リズム、運動の習慣化などをご自身で意識することで生理周期をコントロールすることも大切です。しかし、生理不順などの生理周期の乱れが3ヶ月以上長引いていれば、当院を受診ください。

生理不順(月経不順)の種類

稀発月経(きはつ)

稀発月経とは生理周期が39日以上となる状態です。
次第に生理周期が長くなる場合と、急に生理周期が長くなる場合の2パターンがあります。
これは、ホルモン分泌や卵巣機能の問題によって起こるとされています。
また、卵胞が成熟するために長く時間がかかるという体質上の問題で生じる場合もあります。
生理周期が長くなっても排卵していて定期的に生理が来ていれば、妊娠・出産できます。しかし、完全に排卵が止まることも稀にあるため、なるべく早めに医師の診察を受けることが重要です。

頻発月経

頻発月経とは生理周期が24日以下になる状態です。周期が短くなるため、生理が1ヶ月に2回来る場合もあります。
ホルモン分泌や卵巣の機能の問題によって生じる恐れがあります。
出血期間が長いと貧血になっている場合もあります。

過長月経

過長月経とは生理が8日以上長引く状態です。脳下垂体や脳の視床下部、卵巣などの異常によって生じるとされており、黄体ホルモンの分泌不全や無排卵などの恐れがあります。

過短月経

過短月経とは生理が2日以内に終わる状態です。多くの場合、経血量が不足する過少月経も同時に起こり、子宮の発育不良や女性ホルモンの分泌不全などの恐れがあります。
「生理が来ても辛くない」と放っておく方も多いため、要注意です。

プレ更年期(30代後半以降)の
生理不順

更年期になると女性ホルモンの分泌量が非常に乱れ、少なくなるとされていますが、その前段階のプレ更年期の時点で卵巣機能は少しずつ弱まっていきます。そのため、女性は35歳くらいから経血量の不足や生理周期の乱れが生じやすくなります。
プレ更年期でも心身に多くの不調をきたす場合があるため、その際には足りていないホルモンを補充するホルモン補充療法が効果的です。

生理不順や無月経の
リスクと治療

原因ごとのリスク

女性ホルモンが分泌されない場合

10~20代の女性にとって、子宮の適切な発達を促進する女性ホルモンの分泌はとても大切なものです。
また、女性ホルモンは脂質異常症や骨粗鬆症を発症しづらくする大切な働きをします。
そのため、女性ホルモンの分泌が減ると、心筋梗塞や脳梗塞、骨折が起こりやすくなります。
また、子宮の萎縮が加速し、妊娠が難しくなります。そのため、女性ホルモンが分泌されない場合は、ホルモンを投与する治療を行います。

無排卵の場合

無排卵の状態を放っておくと、将来的に妊娠が困難となり、さらには子宮体がんも発症しやすくなります。
また、生理不順によって生理と大切な予定が重なってしまう場合もあります。多のう胞性卵巣症候群の可能性もあるため、注意が必要です。

リスク解消のための治療

妊娠を希望している方には、排卵誘発薬を使った薬物療法を実施します。
妊娠を希望しない方には、低用量のホルモン剤(低用量ピルもしくは黄体ホルモン)を使用し、がんを発症しづらくします。
ホルモン剤を使うことで、生理と大切な予定が重ならないように生理周期を調整することもできます。

基礎体温を記録することを
お勧めします

基礎体温を記録することをお勧めします女性は、排卵前後で安静時の体温が多少変わります。通常、排卵後~月経が始まるまでの2週間程度は高温期、生理直後~排卵までの2週間程度は低温期と考えられています。
安静時の体温を毎日同じ時間に測り「基礎体温」を記録すると、体温の変化を基に排卵の有無を把握し、生理の時期が推測可能となります。
また、体温が変わっていなければ、生理が来ても無排卵の恐れがあります。
さらに、基礎体温を記録することによって、過少月経・過短月経と排卵時の出血を判別することが可能です。

婦人科疾患の恐れがあっても、基礎体温を記録していれば円滑に診断を行えます。
特別に異常がない時から基礎体温を記録しておくことで、ご自身の身体のリズムを把握することが可能です。
些細な異変でも自覚できるようになり、効果的なセルフケア、疾患の発症予防・早期発見にも繋がりますので、基礎体温を記録しておきましょう。

よくある質問

生理不順がどの程度起こっていれば受診すべきですか?

下記をご参照ください。

  • 今回のみ生理が1週間遅れている
    健康な方は大きな心配はいりませんが、妊娠しているかもしれない場合は市販の妊娠検査薬で調べてみましょう。陽性となった際は、なるべく早めに当院までご相談ください。
  • 生理周期が不規則だが、3ヶ月以上生理が来ないということはない
    20歳以上の方で生理周期が不規則な場合は、当院までご相談ください。10代の方でまだ妊娠を希望していない場合は、当分は様子を見ても問題ありません。
  • 生理が3ヶ月以上来ない
    閉経がうたがわれる年齢(45歳以上)の方は更年期に伴う症状がひどくなければ様子を見てください。45歳未満の方は卵巣機能に異常があるかもしれないため、なるべく早めに当院までご相談ください。初潮からまだ2~3年の方は、当分は様子見でも問題ありません。
  • ダイエットをしたら生理が来なくなった
    激しい運動やダイエットで生理が来なくなった方は、できるだけ早めに当院までご相談ください。

生理不順かどうかはどのように診断しますか?

生理不順の疑いがある患者様では、はじめに妊娠の有無をチェックすることからスタートします。
妊娠の有無は、問診と尿検査(尿中hCG)で確認します。
妊娠していなければ、生理不順の原因疾患の有無を確認します。
内診や細胞診検査、経膣超音波検査、血液検査(貧血の有無、血中ホルモン検査など)などで確認します。

生理は何ヶ月来ないと危険な状態ですか?

今まで月経周期が順調だった方で3ヶ月以上生理が来ない場合は卵巣機能低下の恐れがあるため、なるべく早めに当院までご相談ください。
初潮からまだ2~3年の方は、当分は様子見でも問題ありません。

生理不順は様子見でも大丈夫ですか?

無月経や生理不順を長い間そのままにしておくと、若い女性の方は卵巣機能がダメージを受け、将来的に不妊になるリスクがあります。
また、子宮体がんや骨折の危険性も増すため、注意が必要です。
婦人科疾患の症状として起こる場合もあるため、お悩みの症状があれば放っておかず、なるべく早めに当院までご相談ください。

基礎体温を計測するタイミングについて教えてください。

「生命維持に欠かせない最低限のエネルギーのみを使っている安静時の体温」が基礎体温です。
朝起きて、布団から出る前に測ることをお勧めします。
毎日同じ時間に測ることで、より正しい結果を得られます。
しかし、シフト制や夜勤で働く方は、毎日同じ時間に測ることは困難な場合もあると思います。
その場合、4時間以上の睡眠時間を確保した状態であれば、基礎体温として記録しても問題ありません。