子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮に生じるこぶ状の良性腫瘍です。子宮は平滑筋という筋肉で成り立っているため、子宮に生じる腫瘍は筋腫と呼ばれます。
日本の30歳以上の女性の25%は子宮筋腫を患っていると考えられており、ありふれた疾患です。
微細な筋腫であれば自覚症状が乏しく、妊娠にも支障をきたさないことがほとんどです。
しかし、女性ホルモンの作用で巨大化するため、加齢に伴い巨大化していき、手術が必要となることも少なくありません。一方で、閉経すると少しずつ縮小します。
基本的な婦人科のがん検診では、超音波を受けない場合、内診だけを行うため、小さな筋腫や分かりづらい場所にできた筋腫は見落としやすいとされています。
特に、妊娠前の方は不妊に繋がる恐れがあり、妊娠前の心の準備、最適なタイミングの手術、治療が重要です。
症状
大きさ、数、場所などに応じて、症状の程度や内容は異なります。起こりやすい症状として、生理が長引く過長月経、経血量が増える過多月経、月経痛が挙げられます。
過多月経になると貧血が起こるため、動悸、立ち眩み、倦怠感などの症状が起こる場合もあります。
生理の症状の他、膨満感や便秘、頻尿などの症状や、尿の通り道である尿管が押しつぶされると水腎症が起こる可能性もあります。
検査
超音波で筋腫のサイズを調べることが多いですが、筋腫が複数ある、巨大化している場合、もしくは肉腫のような悪性腫瘍の懸念がある場合、MRIでの検査が必要です。
その際は提携先の医療機関でMRIを受けていただき、結果を踏まえて当院で最適な治療方針を検討します。
治療
無症状かつ将来妊娠を希望していない方であれば、3ヶ月~1年に1回、経過観察を実施します。
過多月経などの症状がみられたり、日常生活にも影響がある場合は、ホルモン療法もしくは手術療法をご案内いたします。
将来妊娠を希望する方は特に、医師ときちんと話し合って治療方法を選択することをお勧めします。
ホルモン療法
貧血が重く生理を止めたい方や、閉経間近なため手術せずに治療を受けたい方が選ぶ治療法です。
レルミナやGnRHアナログなどのホルモン剤を使って生理を抑えるため、女性ホルモンの分泌量が少なくなり、筋腫が小さくなります。
なお、ホルモン剤の使用を止めると再び筋腫が巨大化して過多月経などのリスクが上がるため、服薬中断と治療再開を繰り返さないといけない場合もあります。
また、女性ホルモンの分泌量が著しく減るため、骨密度低下や更年期障害などの副作用がみられる恐れがあります。
筋腫による過多月経に対して低用量ピルやミレーナを選択することもあります。
手術療法
子宮の全摘出の他、筋腫のみを摘出する筋腫核出術、子宮鏡下筋腫核出術、その他にも最新の治療法が存在します。
こうした治療法を行う場合は、患者様とご相談して、対応できる医療機関をご紹介します。
子宮内膜症
腹膜や卵膜などの子宮外に、何かしらの原因で子宮内膜のような組織が生じ、増殖する疾患を子宮内膜症と呼びます。
子宮外に生じた内膜は、通常の子宮内膜と同様に、毎回の生理で増殖・剥離しますが、通常の子宮内膜とは違って、しっかりと排出されずに蓄積したり、炎症が頻発したりするため、痛みや複数の疾患を引き起こします。
若い頃に重い生理痛で苦しんでいた方は、その時は疾患が発見されなくても、後々内膜症を発症するリスクが高いとされています。
症状
子宮内膜は生理が来る度に増殖・剥離するため、子宮内膜症では生理痛が次第にひどくなる特徴があります。
また、生理中に排便痛が生じる場合もあります。強く癒着している場合は、性交痛が生じることもあります。
軽度の内膜症でも激しい痛みを生じる場合があるため、症状から疾患の程度を確認することは難しいです。
子宮内膜組織が卵巣に生じると、卵巣のう胞(チョコレートのう胞)となり、長期的な腰痛や腹痛を引き起こす恐れがあります。
また、腹腔内で癒着すると、卵巣や子宮、卵管の機能低下が起こり、不妊に繋がる恐れもあります。
治療
手術療法、手術を行わない保存的療法の2つに大別されます。
一度生じると、生理が来るたびに症状が重くなる特徴があり、手術しても何度も再発しやすいため、長期的に再発予防・経過観察することが重要です。
手術療法
これから妊娠を希望される方は正常卵巣は残して腫瘍のみを摘出する方法、妊娠希望がない方は卵巣ごと取る方法を選択します。
卵巣以外の内膜症も同時に除去します。手術は基本的に腹腔鏡を用いて行います。
保存療法
保存的療法はジエノゲスト、低用量ピル、黄体ホルモン、レルミナ、GnRHアゴニストで行います。
術後に再発予防のため、保存的治療に移行することをおすすめします。
患者様の生活習慣、病状、ご意見などを確認し、しっかりと話し合いながら治療方針を決定します。
メリット・デメリットをきちんと把握し、ご自身に適した治療法を選択することが大切です。閉経すると、病状は快方に向かいます。
子宮腺筋症
子宮内膜のような組織が何かしらの原因で子宮筋層内に生じ、増殖する疾患を、子宮腺筋症と呼びます。
子宮筋層が次第に厚くなることで、子宮が大きく・固く変化していきます。
症状
過多月経、過多月経による貧血、月経痛、長引く生理などが主な症状です。
次第に症状が重くなり、骨盤痛が慢性化する場合があります。
よくある質問
子宮筋腫は放置しても問題ありませんか?
筋腫ができていても、圧迫症状や貧血が起こっていなければ、経過観察で問題ありません。
軽症であれば、基本的にお薬を使った対症療法を実施します。
しかし、日常生活に悪影響が及ぶくらい症状が重い場合は、子宮温存や妊娠についてのご希望を伺いながら、ホルモン療法などの薬物療法、もしくは手術などの治療法をご案内いたします。
子宮筋腫ができると妊娠・出産に支障はありますか?
症状がなく筋腫が小さければ、妊娠・出産に影響はありません。
子宮筋腫の大きさ、位置によって流産や妊娠が難しくなるケースもあります。
しかし、最近では初産年齢が高くなっており、子宮筋腫を患っている妊婦の方も多くなっています。
また、妊娠初期に経腟超音波検査を実施するため、微細な筋腫も容易に発見でき、早い段階で治療方針を検討することが可能です。
子宮内膜症で禁止されることはありますか?
特に禁止されることはありません。症状が重く身体を動かすのがつらい時に無理は禁物ですが、体調が悪くなければ意識的に運動することをお勧めします。
スポーツに苦手意識がある方でも、ヨガやストレッチ、アロマなどで心を落ち着けると、痛みも軽減します。
また、運動によってストレス解消も期待できます。
子宮腺筋症はストレスによってひどくなりますか?
現在でも子宮腺筋症の明確な原因は不明です。
何かしらの要因で、子宮内膜が子宮筋層に入り込むことが原因とされています。
また、帝王切開術、子宮内膜掻爬(そうは)術、子宮筋腫の手術など、子宮内膜に対する手術を受けた方が発症することが多いとも言われています。
現時点では、ストレスなどの環境要因が発症と関係しているという医学的エビデンスはありません。
子宮線筋腫を発症しやすいのはどのような人ですか?
40代の方が最も発症しやすく、特に妊娠・出産経験がある女性によく見られます。
他にも、帝王切開、掻爬手術、筋腫の手術など、子宮内膜に対する手術を受けた方が発症することが多いとも言われています。